公益社団法人日本女子体育連盟
2021年2月3日に開かれた公益財団法人日本オリンピック委員会の臨時評議員会において、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、東京2020組織委員会)会長を務める森喜朗氏が「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」「(女性は)競争意識が強い」といった趣旨の発言をし、さらに「女性の理事を増やしていく場合は、発言時間をある程度、規制をしないとなかなか終わらないので困る」という意見を否定することもなく紹介したことが報道されています(読売、朝日、日本経済、毎日各紙、NHK、2021年2月3~4日)。 この発言について森氏は、2月4日午後に開かれた記者会見において「オリンピック・パラリンピックの精神に反する不適切な表現であった」と認め、発言について謝罪、撤回しました。そして、組織委員会は「改めてビジョンを再確認し」「大会後の社会の在り方にもレガシーを残すよう」取り組む姿勢を公表しました。 多様性を受容し、違いを生かしながら共生する社会を実現するための取組みは、国際社会共通の課題となっています。そして同時に、スポーツ基本法において「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは、全ての人々の権利」と宣言した体育・スポーツ・ダンスのコミュニティとして、必ず実現しなくてはならない課題です。 公益社団法人日本女子体育連盟はこれまで、暴力やハラスメントとは無縁の体育・スポーツ・ダンスの世界をめざし、その理論や指導方法の研究と啓発活動を展開し、成果を蓄積してきました。また、体育・スポーツ・ダンスを通じた対話を促進することで、個別性と社会性の両方をしっかりと育み、開かれた世界、つまり多様な人々がその個別性のために参加機会を妨げられず、生き生きと自分らしく生きることができる(生きる甲斐のある)世界を構築することに貢献すべく、研究と指導活動を進めてきました。その一環として、男女共同参画に向けた運営にも取り組み、たとえば役員・委員には男性が徐々に増加してきています。 このように私たちの活動が社会に一定の影響を与えていると自負する一方で、暴力、ハラスメント、性に関わる不平等、差別や排除を本当の意味で無くすることはまだできておらず、体育・スポーツ・ダンスの世界に、これらと関連する課題がまだまだ残されていることも事実です。今般の森氏の発言は、客観的な根拠なく女性の性質を批判するものであり、これが社会的影響力を持ち、体育・スポーツの発展に責任ある立場の人物の発言であることも、問題の深刻さを示しています。 私たち公益社団法人日本女子体育連盟は、性別や年齢に関わらず、一人ひとりの人にとって豊かで生きる甲斐のある社会をつくるために、多様な連携を作り出し、体育・スポーツ・ダンスの教育研究を通じて貢献してゆくという責務を改めて再確認し、体育・スポーツ・ダンス関係者の取り組みに寄与する教育研究活動を推進することをここに表明します。 以上。
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